足くびの捻挫
そもそも、足くびのねんざとは?
「ねんざ」という言葉の定義は、実は曖昧です。様々な医学書に書かれている中でも統一された定義はありません。しかし「足くびのねんざ」といえば、「足首の関節可動域(動く範囲)が生理的な可動域を超えた動きを強制された時に起こる靭帯損傷で、足くびの正常な形状は保てているもの」ということができます。シンプルに言うと、「足くびの靭帯損傷」となります。
病院を受診すべきタイミングや症状
「ねんざ」で病院に行くべきかを悩まれたら、次のチェック項目で判断してみてください。
もし、一つでも当てはまれば病院を受診してください。
- 足首が腫れている
- 歩く時に痛みがある
- 痛みが全然治まらない
- 青タン(皮下出血)がある
診断方法や必要な検査は?
- 問診
- 診察(視診・触診)
- 徒手的ストレステスト
- 画像検査(レントゲン検査・MRI検査)
これらを総合的に行って診断していきます。
治療方法は?
足くびのねんざの治療には『保存療法』と『手術療法』があり、まずは『保存療法』を行います。『保存療法』とは手術をしない治療法であり固定や安静、リハビリテーションが含まれます。受傷状況や患者さんのスポーツ歴、今後のスポーツ復帰時期を総合的に考慮した上で、治療法を選択していきます。
『保存療法』には、以下に示す4つの治療法があります。
- RICE(ライス)/PRICE(プライス)療法
- Functional treatment(ファンクショナルトリートメント)
- テーピング
- リハビリテーション
1,RICE(ライス)/PRICE(プライス)療法
RICEとは、Rest(安静)、Iceing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字をとった治療法で、スポーツ現場から医療現場まで幅広く行われている新鮮組織損傷に対する処置方法です。アメリカではスポーツ外傷に対する初期対応として昔から行われていますが近年では、RICEに、Protection(保護)を追加した「PRICE」がいろいろな怪我に対して広く用いられています。PRICEは一般的に受傷直後から受傷後72時間程度までに行うと効果的です。
・Protection(保護)
受傷した足首に対して、保護や固定を行うことをいいます。その固定方法には、castやsplint、軟性道具などがあります。当院では足首の状態、生活環境、スポーツの復帰状況等総合的に判断し固定方法を決定していきます。
・Rest(安静)
患部を安静に保つことをいいます。損傷した組織への過度な血流増加を防ぐことを目的として、安静にすることで組織の修復を促します。
・Ice(冷却)
氷などで患部を冷却します。冷却する目的としては、損傷部位の温度を低下させ更なる損傷を防ぐことと痛みの感じ方を低下させる目的で行います。
・Compression(圧迫)
包帯などで患部を圧迫することをさし、その目的は組織からの出血と腫れを軽減させることです。
・Elevation(挙上)
心臓より高い位置に患部を挙上することで、患部組織からの出血と腫れを軽減させる目的で行います。
2,Functional treatment(フォンクショナル トリートメント)
Functional treatmentとは受傷後早期からサポーターなどを装着して足関節を軽く固定した上で体重をかけたり、動きの制限をあまりもうけない治療法であり近年その有効性が高まりつつあります。しかし、自己判断で行なってしまうと痛みが残ってしまう可能性がありますので痛みがある場合は一度、医療機関を受診してください。
3,テーピング
テーピングの目的は、けがに対する応急処置と再発予防です。テーピングを行うことで関節の動きが制限され、損傷部位を保護し痛みを和らげることができます。スポーツをする方の場合は、そのスポーツの特性やルールを把握しつつ行うことが大切です。
4,リハビリテーション
リハビリテーションのゴールは、受傷前の状態に戻ることです。またアスリートにおいては、各々の競技に特徴的な動作を再獲得し競技復帰することでもあります。
当院で行うリハビリテーションは、
- 足関節可動域訓練(足関節の動きを取り戻す訓練)
- 筋力トレーニング
- バランストレーニング
- 持久力トレーニング
の4つ組み合わせて行っていきます。
アスリートの人とアスリートでない人との治療法の違い
アスリートではない人に対しては、「痛みの軽減」を最優先としています。そのため、痛みで足を引きずっている方や痛みが強い方に対しては、足首をシーネなどでしっかり固定したのち、痛みの程度に応じてサポーターや包帯に変更していきます。
アスリートの方に対しては、痛みの程度と競技復帰を目指す時期を天秤にかけ、治療計画を立てていきます。競技復帰までに十分に時間が確保できる場合は、アスリートではない人と同様に「痛みの軽減」を優先します。一方で、早期競技復帰を目指す方に対しては、サポーターを使用してfunctional treatmentを行い、痛みが軽減し競技動作がある程度行えるようになったら競技復帰を許可していきます。
〈たかが捻挫、されど捻挫〉
「ねんざ」は軽い怪我と捉えられがちな病気ではあり、患者さんの自己判断で病院を受診しなかったり医療機関を受診しても治療する側が正確な診断をすることなく安易に治療することで「こじらせてしまう」可能性があります。
怪我をした後でもなんとか歩けてしまうといつか治るだろうと放置してしまいがちです。しかし、初期治療を誤ると痛みが残ってしまったり、日常生活やスポーツの際に十分に足首が使用できなくなることもあります。「たかが捻挫で病院受診なんて・・」と考えず、怪我をしたら早めに病院を受診しましょう。