手首・指の痛み
手首に多くみられる痛み例
怪我による痛み
手首の怪我は、主にはスポーツ時やご高齢の方の転倒時に多くみられるものでした。しかし、昨今では運動能力の低下に伴い、小児の患者数も多くなりつつあります。
橈骨遠位端骨折(トウコツエイイタンコッセツ)
転倒等により手首を強く突いた際に橈骨(トウコツ)が折れるもの。手の甲側に折れると「コレス骨折」と呼び、手のひら側に折れると「スミス骨折」と呼びます。
転位が少なければ通常はギブス固定で数週間ほどで治りますが、ご高齢の方は治癒を早めるために手術を選択する症例も増えてきています。加えて、手関節に近い部分の骨折のため、あわせて専門的なリハビリを要します。リハビリを行わなければ、手関節の動きにくさが残る可能性があります。
小児の場合は骨が非常に柔らかいため、完全に骨が折れ切っていない状態(若木骨折)になることがあります。そのため痛みもあまり感じないケースがありますので、正しい診断を行うことが大切です。特に小児は自己矯正力が高いため、多少の弯曲がみられてもギブス固定することにより自然に治癒してゆく傾向があります。手術は行わないのが原則ですが、手首部分には大事な成長軟骨(骨端線)もあるため、骨端線の転位が強い場合は手術を行うことがあります。
舟状骨骨折(シュウジョウコツコッセツ)
手首には8つの骨があります。特に舟状骨と呼ばれる部分は手を強く突いたときに特に折れやすい骨です。非常に血行の悪い骨であるために治りが悪く、偽関節(骨折が治らない状態)になりやすい危険があります。骨折が明白な場合は手術を要します。手術の際は特殊なネジで固定します。
疾患による痛み
手根管症候群(シュコンカンショウコウグン)
手首の手のひら側にある正中神経が圧迫されて起きる障害。親指と人差し指と中指にしびれを感じるのが特徴です。進行すると親指のつけ根の筋肉のふくらみ(母指球)が痩せて委縮し、次第に親指が動かなくなります。手を酷使する仕事をされている方だけでなく、妊婦や更年期の女性、透析をされている方などに多くみられる病です。治療としてはまずは安静にすることが大切です。手首部分に硬いサポーターなどで固定をする場合や、ひどい場合にはステロイドの注射をする場合もあります。進行すると手術が必要となります。
ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)
手のひらを垂直に立てて手首を上にあげる際に手首の親指側に張る腱の腱鞘炎です。産後、授乳等で手首を使って赤ちゃんの頭を支えることの多いお母さん方に多くみられる傾向があります。治療としては安静が重要となり、痛みがひどい場合には固定用サポーターや注射を用います。症状がひどい場合には手術となることもあります。
母指変形性CM関節症(ボシヘンケイセイシーエムカンセツショウ)
親指のつけ根にある最も動く関節をCM関節と呼びます。長期に渡って酷使されることで変形しやすく、物をつまんだり大きなビンの蓋を開ける動作などで強い痛みを感じやすい病です。高齢者の方に多くみられ、治療法は安静が最も効果的です。必要に応じて母指を固定するサポーターや注射を用いて治療します。ひどい場合には手術となることもあります。
ばね指
指の使い過ぎによる腱鞘炎です。指を曲げ伸ばしする際にばねのように反動や引っかかり、痛みを伴うのが特徴です。ひどくなると指が曲がりきって伸びなくなることがあります。特に長時間の編み物やピアノやキーボード打つなど指を酷使する方などに起きやすい病です。安静を第一とし、必要に応じて注射治療を行います。重症の場合は手術をすることもあります。
ガングリオン
指や手首の関節にゼリー状の液体が溜まり、硬い小さなふくらみができる病です。ふくらみが非常に硬いため、骨が突出したと勘違いされてお越しになられる患者さんも多いです。繰り返しできることがありますが、注射で溜まった液体を抜くとすぐに治ります。
ヘバーデン結節・ブシャール結節
手の指の関節が変形してしまう病です。第一関節(DIP関節)の変形をヘバーデン結節と呼び、第二関節(PIP関節)をブシャール結節と呼びます。明らかな原因は不明ですが、加齢による変化と考えられています。見た目を気にして心配される方が多いですが、指の動き的には問題がないため、特に治療を必要としません。
ひじや手首の怪我は、年齢や性別にかかわらず起きるものです。
異常を感じた場合には放置せず、早期に整形外科での専門的検査を受けることを推奨します。
ひじや手首は、日常的な動作に直接的に関わる重要な部位です。将来的な身体の動きにも深刻な影響を与える可能性があるため、痛みや異常を感じた際には早期に正確な判断と治療を開始することが大切です。また、安静にすることが最大の治療となるケースも多いです。痛みや違和感を放置せず、整形外科での精緻な検査に基づく正しい診断をお受けすることをおすすめします。