腰部椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは?
背骨と背骨の間には「椎間板」というクッションの役割をしている組織があります。その椎間板の一部が腰の部分で脊柱管内に飛び出した状態のことを腰椎椎間板ヘルニアといいます。椎間板が神経根や脊髄といった神経組織を直接圧迫したり、椎間板の炎症が波及することで椎間板ヘルニアの症状が引き起こされます。椎間板ヘルニアの中で最も腰でのヘルニア多く、特に第4腰椎と第5腰椎間、第5腰椎と第1仙椎間の発症例が多いです。
症状は?
ヘルニアの程度により異なり様々な症状がでます。
・腰が痛む
・足がしびれる・感覚がおかしい
・足が冷たい感じがする
・正座した後のように腰や足がジンジンする
・腰が痛くて足が上がらない
・歩くと足がだるくなったり、痛みが出る
・足に力が入らない
このような症状があれば、医療機関を受診してください。
原因は?
スポーツなどで腰を酷使したり、重たいものを持ち上げたりしたことがきっかけでなることがあります。そのほかに加齢や喫煙、ストレスや姿勢が悪い状態が続いた場合なども原因となります。腰椎椎間板ヘルニアの方は、前屈みの姿勢で痛みを感じる方が多いです。また普段からデスクワークなどの座っている時間が長い方もなることがあります。年齢的には、高齢者の方よりも20代〜40代にかけて比較的若い男性に多いのも特徴的です。
必要な検査は?
腰椎椎間板ヘルニアの症状は多彩であるため、診断には問診のほかに画像検査が重要となってきます。診断を行う上で必要な画像検査は、①レントゲン検査と②MRI検査があります。患者さんからの問診をした上で、必要に応じて検査を行います。診察においては、下肢伸展挙上試験や足の筋力や感覚が落ちていないかどうかを確認します。
- レントゲン検査は、腰骨の変形や並び、バランスの状態を把握する上で行います。
- MRI検査は、椎間板の突出程度や変性具合を確認する上で行い、その程度に応じて治療方法を決定します。MRIに関する詳しい説明は、「MRIによる診断」サイトをご参照ください。
治療方法は?
腰椎椎間板ヘルニアの治療方法には、大きく分けて4つあります。
必要な検査を行った上で、椎間板の変性やヘルニアの突出程度に応じて治療方法を決定していきます。
①内服薬による治療 ②物理療法を含むリハビリテーション治療 ③ブロック注射 ④手術療法
①内服薬による治療
消炎鎮痛剤(いわゆる痛み止め)の内服や神経障害性の疼痛治療薬を用いて治療を行います。
ヘルニアによって生じた神経や周囲組織の炎症を抑える目的で行います。
②物理療法を含むリハビリテーション
腰椎けん引療法や理学療法士による運動器リハビリテーションを行います。
運動器リハビリテーションの内容に関しては、患者さんの状態によりオーダーメイドで決めていきます。痛みが強い時はまずコルセットを装着し腰の安静を図り、痛みが軽くなれば腰椎牽引やリハビリを行います。
③ブロック注射
症状が重く痛みが強い場合は、ブロック注射を行います。また症状の重症度によっては、ペインクリニック等で神経根ブロックを行う場合もあります。
④手術加療
①〜③の治療を行ってもなお症状の改善が認められない場合は手術加療が必要となる場合があります。また症状が急激で、足の力が入らなかったり(下肢筋力低下)、便や排尿が困難な症状(膀胱直腸障害)が出ている際は手術可能な関連病院へすぐにご紹介させていただく場合があります。
Q &A
Q.坐骨神経痛との違いは?
坐骨神経に沿って、臀部や足の痛み・しびれがある状態で、病名ではなく症状のことを指します。坐骨神経は腰の神経から臀部や足の方へ枝分かれしている神経で太ももの裏側、ふくらはぎ、足の裏まで続いています。そのため、腰椎椎間板ヘルニアによって、腰の神経が圧迫され、臀部から足の後面まで症状が出た症状のことを坐骨神経痛と言います。
Q.ヘルニアって再発するの?
突出したヘルニアは治療により改善しますが、ある一定の割合で再発が起こるとされています。椎間板というクッションは中心に髄核、周囲に繊維輪という組織があり、クッションが傷つくことで繊維輪に傷がつき、髄核が漏れ出すことで症状が出ます。その傷の具合によって再発する場合としない場合があります。
Q.首や胸のヘルニアもあるの?
あります。頸椎椎間板ヘルニアや胸椎椎間板ヘルニアという疾患があります。
Q.腰痛は温泉とかで温めたほうがいいのですか?
A、痛みなどの症状が出ている時期によって温める方がよいか、冷やす方がよいかは異なります。痛みが強い時期に温めると逆に症状を悪化させてしまうことがありますのでご自身で判断せず、医療機関を受診してください。
Q.一度出たヘルニアは治るの?
A、ヘルニアは腰骨をつなぐ靭帯を突き上げ、大きくなると脱出します。しかしこの靭帯を突き破りで脱出したヘルニアは、自分の体が異物と判断し消化され縮小します。そのためヘルニアが手術なしで改善する理由の一つとなります。