骨粗鬆症・リウマチ
骨粗鬆症
特に65歳以上の女性に多くみられる病です。
“いつの間にか骨折”という言葉でも表現されるように、全身の骨がもろくなり、骨折しやすい状態を骨粗しょう症と呼びます。特に背骨に症状が表れやすく、背中が丸く曲がってしまい背が低くなってしまう特徴があります。
その他にも
- 今まで取れていた棚の上のものが取りづらくなってきた
- キッチンの台が高くなった気がする
といったような日常生活の中から、ご自身の体の変化に気づかれる方も多いです。
骨粗しょう症は特に痛みを感じることもなく、長期に渡りゆっくりと進行していく病のため、ご自身だけではなかなか気づきにくい病であることも、発見が遅れがちになってしまう理由のひとつです。
Q.骨粗しょう症になるメカニズムとは?
A.骨密度の低下により、骨がつぶれてしまう状態です。
例えば、空のダンボール箱は、どんどん上に積み上げていくといつしか下のダンボールがつぶれてしまいます。そういった状態がまさに骨粗しょう症です。中身が詰まったダンボールであればつぶれることはありませんが、中が空洞でスカスカな状態であるほど支える力は弱くなってしまいます。そのため、骨粗しょう症はできるだけ早期の段階で気づき、必要な対策を講じる必要があります。
骨は人間に必要なカルシウムのストックである
骨は新しい骨を作るとき、自らの骨を溶かしながら代謝を繰り返すという性質を持っています。ゆえに、新しい骨を作り出すためにプラスに動く力と、今ある骨を壊そうとするマイナスの力の両者が働くこととなります。しかし、高齢になるにつれて骨を壊そうとする力の方が自然と強くなります。それがそもそもの骨粗しょう症にある根本の要因です。
Q.骨粗しょう症の判定はどのように行いますか?
A.精密な骨量検査を受けることをおすすめします。
地方自治体が行う健診の中に、骨粗しょう症を判定する検査が盛り込まれていることがあります。よくあるのは、かかとの骨をエコーで診る検査方法です。しかし、この検査結果はひとつの指標とはなるものの、詳細な骨密度を測るまでには至らないのが現状です。そのため、整形外科において測定する数値とはかなりのズレが生じるケースも多々あります。健康診断で骨粗しょう症が疑われる結果が出た場合はもちろんのこと、気になる症状をお感じの方は、できるだけ早く整形外科での精密な骨量検査を行うことをおすすめします。
Q.必要となる検査とはどんなものですか?
A.レントゲンや骨密度検査などを行い、骨の状態を精密に分析します。
まずは背骨のレントゲン検査が必要です。すなわち、胸椎や腰椎のレントゲンが判断基準となります。さらに詳細な骨密度検査を行うために、前腕や腰、股関節の骨を測定する機器もあります。骨のピークは20代~40代と言われており、その時期(若年成人平均値:YAM)と比べて脊椎圧迫骨折などの既存性骨折がある場合は80%以下、既存性骨折がない場合は70%以下が骨粗しょう症と診断します。年齢においても65歳くらいの時期が、ちょうど70%の境目となることが多いため注意が必要です。骨粗しょう症が疑われた場合には、4か月に1回程度のペースで骨密度検査を行いながら、数値比較をすることが大切です。
骨粗しょう症のガイドライン
骨粗しょう症の危険因子として考えられるものとしては以下の通り。
- 女性であること
- 高齢であること
- 既存骨折があること
- 喫煙
- 飲酒
- 運動不足
- 喘息やリウマチなどによるステイロイド薬の服用
- 低体重(BMI22以下)
特に女性は閉経により女性ホルモンが急激に低下することで、骨粗しょう症が進行すると考えられています。
Q.治療はどのように行いますか?
A.必要に応じて薬物治療や注射治療で改善します。
骨密度の値が非常に低い場合には、骨粗しょう症用の薬を服用する治療を行います。
骨自体を補強するための治療
カルシウム剤の補強や、腸管からのカルシウム吸収を促進するビタミンDの補強をするための薬を服用します。
自らの骨を壊そうとする力をやわらげる治療
毎朝飲むタイプの薬や、週1回または月に1回というペースで飲む薬があり、患者さんの症状に応じて服用します。
経口薬で効果が得られない場合には、注射による治療法もあります。ペン型の皮下注射を毎日ご自分で打たれる方法や、週に1回や半年に1回といったペースでクリニックにお越しになって打つ皮下注射もございます。
強い背骨の弯曲や骨折した際の治療
コルセットを使用したり、症状が安定してきたら理学療法士によるリハビリを行います。骨に負担をかけずに筋肉を強化する効果的な方法や、骨の回復に必要な刺激の与え方、背筋力の強化についてなど、患者さん一人一人の状況にあった指導を行いながらリハビリ治療を進めていきます。
Q.進行するとどのような症状に繋がりますか?
A.特に多い事例としては以下のようなものが挙げられます。
脊椎圧迫骨折
脊柱が押しつぶされるように骨折する状態。寝たきりにもなり得ます。
大腿骨頚部骨折
転倒で股の付け根が骨折する状態。入院しての手術がほとんどとなります。
手首の骨折
転倒の際に強く手を突くことで、もろくなった部分が折れてしまう状態。
内臓圧迫による逆流性食道炎
姿勢が悪くなることで内臓を圧迫し、食道と胃の境目が炎症を起こします。
肺活量の低下
深呼吸ができなくなることにより肺活量が低下、体調不調を引き起こしやすくなります。
転倒や怪我が多くなる
背骨が曲がり、姿勢が前傾になることでバランスを崩し、転倒しやすくなります。大きな事故や怪我に繋がる可能性があります。
Q.骨粗しょう症になりやすい人の傾向はありますか?
A.比較的痩せ型の女性は進行スピードが速いように感じますが、高齢になることで女性はどんな方にも起こりやすい病です。まずはレントゲンと骨量検査に基づいた正しい診断を早期にお受けいただくことが肝心です。
Q.若い人でも骨粗しょう症になりますか?
A.消化器系の手術や卵巣摘出された方などは、早期に骨粗しょう症を発症する可能性があります。
例えば胃潰瘍等で胃や消化器系の手術をされた方は、栄養が十分に摂れないことで骨密度の低下がみられる場合があります。また、卵巣嚢腫などで卵巣を摘出された方は、女性ホルモンが出なくなることにより早期に骨粗しょう症に陥る場合があります。他にも、幼少期から喘息やアトピーなどでステロイド薬を長期使用されている方やリウマチの方も多いです。いずれも二次性の骨粗しょう症であり、治療は薬物治療を用いることが多いです。
その他、激しいスポーツをされている方などは、激しく筋肉収縮を行う際に体内のカルシウムが消費されやすいため骨が薄くなられることがあります。
Q.予防のために今から始められることはありますか?
A.基本的には食事と運動が大きな役割を果たします。
食事においては、カルシウムやたんぱく質の多いものを摂取することが大切です。骨はカルシウムとタンパク質でできています。鉄筋コンクリートで例えるならば、鉄筋がタンパク質であり、コンクリートがカルシウムにあたります。そのため、両者がバランスよく摂取できていなければ強い骨は出来上がりません。
もうひとつ骨の強化に重要な役目をになうものは運動です。ウォーキングや軽い体操レベルで構いませんので、無理なく長く続けられる運動を取り入れる工夫をぜひ見つけてみてください。
ちなみに、ガイドラインではカルシウムは1日当たり700~800mlの摂取が必要と言われています。牛乳や小魚を骨ごと食べるなど、食生活を意識して切り替えてみることも大切です。さらに、カルシウムの吸収を促進するビタミンDは、日光に当たることで活性化されるため、太陽の光を浴びる時間も十分に確保することが大切です。
異変に気づく頃にはかなり進行している可能性も
早期に整形外科での専門的な検査を受けることを推奨します
痛みや骨に傷が入った段階で初めて気づかれることも多い骨粗しょう症。早期にご自身の骨密度の低下を知り、対策を講じ始めることがなにより重要な鍵を握る病です。治療法も薬物やコルセットによる姿勢矯正だけでなく、同時にご自身による適度な運動も必要となります。心理面も大きく関わってくる病ですので、QOL(生活の質)やADL(日常生活動作)の向上のためにも整形外科での専門的かつ詳細な検査を行った上で、効果的な対策を検討することを強くおすすめします。
関節リウマチ
手指の関節の痛みやこわばりがあれば関節リウマチを疑います。
レントゲン検査や血液検査を行います。場合によってはMRI検査も行い診断をします。
関節リウマチとは
関節リウマチとは、本来であれば病原菌などの外敵を攻撃するはずの免疫システムに異常を来たし、自分自身のからだを攻撃してしまい、主に手足の関節が腫れたり痛んだりする疾患です。
病期が進行すると、骨や軟骨を破壊し、関節の変形を来たしたりすることもあります。
原因は、未だ不明ですが、遺伝的要因や喫煙、歯周病などの環境的な要因の関与も指摘されています。
炎症は関節に留まらず肺や目など全身に及ぶことがあり、症状としては、微熱や倦怠感、食欲低下などの症状が出現することもあります。
初期症状としては、主に朝方に手足の指関節がこわばったり、他の様々な関節に痛みが生じることです。
これらの症状に心当たりがありましたら、一度リウマチの診断を受けられることをお勧めします。
関節リウマチの診断・治療について
診断では、問診(関節の腫れや痛み、関節炎の持続期間など)を始め、血液検査やレントゲン検査などの結果を参考に総合的に判断します。
治療は、まず関節リウマチのおける免疫異常を改善する抗リウマチ薬を使用し、十分にコントロールできなければ生物学的製剤や分子標的阻害薬を使用しコントロールしていきます。
抗体リウマチ薬の効果発現には1~3ヶ月かかるため、副作用に注意しながら継続することが大切です。
しかし、薬物治療に頼りすぎて、関節を動かさないでいると、関節が固くこわばってしまいます。
ここで重要となってくることは、リハビリテーションです。
毎日、繰り返し長期にわたり行えば、関節の機能障害を抑え痛みも和らいでいきます。