骨粗鬆症
骨の生活習慣病『骨粗鬆症』をご存じですか?
自分は、骨がもろいのかな?そう気になったことはありませんか?
また身長が縮んだと感じたことはありませんか?
少しでも心当たりがありましたら、病院で一度検査を受けるようにしましょう。
骨粗鬆症とは?
骨粗鬆症とは、シンプルにいいますと「骨がスカスカで骨折しやすい状態」のことです。
それは骨の量(骨密度)が減り、骨の質(骨質)が劣化することで骨がもろくなっているからです。
骨の量は、およそ20歳でピークを迎え、年齢を重ねる毎に誰でも段々と少なくなりますが、それ以上に減ってしまうことで、くしゃみや咳程度で折れたり、荷物を持ち上げて折れたりと日常生活のささいなことで骨折してしまうことがあります。
例えば、空のダンボール箱をどんどん上に積み上げていくといつしか下のダンボールがつぶれてしまいます。中身が詰まったダンボールであればつぶれることはありませんが、中が空洞でスカスカな状態であるほど支える力は弱くなってしまい潰れやすい状態となります。また日本国内の患者数は、推計1280万人(男性が300万人、女性が980万人)いるとされており有病率は、女性において年齢が高くなるほど増える傾向にあります。
骨粗鬆症は、なぜ起こるの?
骨は、骨を造る細胞(骨芽細胞)と骨を壊す細胞(破骨細胞)が働き常に新陳代謝を繰り返しており、身体のカルシウムを調整しています。骨の新陳代謝とは、具体的には、新しい骨を作る「骨形成」と古くなった骨を溶かす「骨吸収」によって作り変えられています。
この調整を行なっているものの一つが、エストロゲンといわれる女性ホルモンですが、閉経や加齢に伴い女性ホルモンが低下すると、この調整バランスが崩れてしまいます。その結果、新しくできる骨よりも壊される骨の量が多くなり、骨はスカスカになり脆くなってしまいます。
女性ホルモンの減少による骨粗鬆症の他にも、骨粗鬆症になる原因は下記に示す原因が挙げられます。
- 加齢: 男性も年齢とともに骨密度が減少
- 栄養不足: カルシウムやビタミンDの摂取不足
- 運動不足: 骨密度維持には適度な骨への刺激が必要
- 遺伝的要因: 骨折の家族歴がある場合は骨粗鬆症のリスクが増加
- 生活習慣: 喫煙や過度な飲酒
- その他の病気: 甲状腺機能亢進症や糖尿病など
症状は?
ほとんどの場合、発症初期は痛みが出ずに症状がありません。“いつの間にか骨折”という言葉でも表現されるように、痛くも痒くもないのです。その為、症状が現れた時にはすでに骨粗鬆症が進行していることも珍しくありません。長期に渡りゆっくりと進行していく疾患のため発見が遅れがちになってしまう理由のひとつです。
現れる症状としては
1.背中や腰が曲がってくる。
2.身長が縮んだ(身長が昔より2cm縮んでいれば要注意!)
3.起き上がり時や立ち上がり時に背中や腰が痛む
4.息切れがする
などです。
骨粗鬆症かなと感じたら、早めに検査を受けましょう。
骨粗鬆症の検査
骨粗鬆症の診断には、3つ検査があります。
- 骨密度測定:DEXA(デキサ)という骨密度測定専用の機械を用いて骨の密度を測定します。腰・股関節・手首の骨のいずれかの骨で測定します。YAM値(若年成人平均値)を確認し、脊椎圧迫骨折などの既存性骨折がある場合は80%以下、既存性骨折がない場合は70%以下で骨粗鬆症と診断します。
- レントゲン検査:骨折の有無や背骨の変形などを確認するために行います。
- 血液検査:カルシウムやビタミンD、骨代謝マーカーを測定し骨の代謝状態を評価します。
当院では、患者さんの骨折の可能性を未然に防ぐために骨粗鬆症検査を積極的に行なっています。受付もしくは診察時に「骨密度測定をしたい」とお伝えして頂ければ、ご予約が空いていれば当日中にさせて頂きます。また検査結果はすぐにわかります。因みに骨密度測定を受ける際には、事前に食事を抜いたりする必要はありません。検査は、保険適用外(全額・10割負担)となる場合がありますがその場合は事前にお伝えさせて頂きます。骨粗しょう症が疑われた場合には、4か月に1回程度のペースで骨密度検査を行いながら、数値比較をすることが大切です。
骨粗鬆症の治療法
骨粗鬆症の治療の目的は、『骨折のリスクを減少させること』です。
治療により、骨折リスクが高まっている人の骨折リスクを3-5割低下させることができます。しかし骨の強さの変化はなかなか目に見えにくく効果を実感しにくいです。そのために定期的に骨密度検査をして治療の効果をみていくことも大切です。
治療法には以下のものがあります。患者さんの年齢や既往歴、検査の結果を総合的に判断し一人ひとりにあった治療法を行なっていきます。
・生活習慣の改善
・運動療法(リハビリテーション)
・栄養療法
・薬物療法(内服薬や注射療法)
骨粗鬆症が悪化するとどうなるの?
骨粗鬆症が進行すると、日常生活動作の中で骨が折れてしまうことがあります。尻もちを軽くついたり、荷物を持ったりすることで背骨が折れてしまうことがあります。背骨が折れてしまうと、時に背中の痛みが続き、前かがみの姿勢や猫背になってしまい身長が縮んでしまいます。姿勢が悪くなると内臓圧迫による逆流性食道炎や肺活量の低下をきたします。またそのほかにも折れやすい部位としては、太ももの付け根や手首、二の腕があります。太ももを骨折してしまうと手術を受ける必要があることが多く、時には寝たきりの状態になってしまう可能性があります。今までのお出かけできていた人がお出かけできない状態になると精神的にもダメージを受け、また認知症になるリスクも上がります。そうならないためにも骨密度の低下を防ぐことが重要です。
Q&A
Q.骨粗しょう症になりやすい人の傾向はありますか?
A.比較的痩せ型の女性は進行スピードが速いように感じますが、高齢になることで女性はどんな方にも起こりやすい病です。まずはレントゲンと骨量検査に基づいた正しい診断を早期にお受けいただくことが肝心です。
Q.若い人でも骨粗しょう症になりますか?
A.消化器系の手術や卵巣摘出された方などは、早期に骨粗しょう症を発症する可能性があります。
例えば胃潰瘍等で胃や消化器系の手術をされた方は、栄養が十分に摂れないことで骨密度の低下がみられる場合があります。また、卵巣嚢腫などで卵巣を摘出された方は、女性ホルモンが出なくなることにより早期に骨粗しょう症に陥る場合があります。他にも、幼少期から喘息やアトピーなどでステロイド薬を長期使用されている方やリウマチの方も多いです。いずれも二次性の骨粗しょう症であり、治療は薬物治療を用いることが多いです。
その他、激しいスポーツをされている方などは、激しく筋肉収縮を行う際に体内のカルシウムが消費されやすいため骨が薄くなられることがあります。
Q.予防のために今から始められることはありますか?
A.基本的には食事と運動が大きな役割を果たします。
食事においては、カルシウムやたんぱく質の多いものを摂取することが大切です。骨はカルシウムとタンパク質でできています。鉄筋コンクリートで例えるならば、鉄筋がタンパク質であり、コンクリートがカルシウムにあたります。そのため、両者がバランスよく摂取できていなければ強い骨は出来上がりません。
もうひとつ骨の強化に重要な役目をになうものは運動です。ウォーキングや軽い体操レベルで構いませんので、無理なく長く続けられる運動を取り入れる工夫をぜひ見つけてみてください。
ちなみに、ガイドラインではカルシウムは1日当たり700~800mlの摂取が必要と言われています。牛乳や小魚を骨ごと食べるなど、食生活を意識して切り替えてみることも大切です。さらに、カルシウムの吸収を促進するビタミンDは、日光に当たることで活性化されるため、太陽の光を浴びる時間も十分に確保することが大切です。
早期に整形外科での専門的な検査を受けることを推奨します
痛みや骨に傷が入った段階で初めて気づかれることも多い骨粗しょう症。早期にご自身の骨密度の低下を知り、対策を講じ始めることがなにより重要な鍵を握る病です。治療法も薬物やコルセットによる姿勢矯正だけでなく、同時にご自身による適度な運動も必要となります。心理面も大きく関わってくる病ですので、QOL(生活の質)やADL(日常生活動作)の向上のためにも整形外科での専門的かつ詳細な検査を行った上で、効果的な対策を検討することを強くおすすめします。
Q.骨粗鬆症の危険因子はありますか?
骨粗しょう症の危険因子として考えられるものとしては以下のようなものがあります。
- 女性であること
- 高齢であること
- 既存骨折があること
- 喫煙・飲酒
- 運動不足
- 喘息やリウマチなどによるステイロイド薬の服用
- 低体重(BMIが22以下)
もしこの中に当てはまることが多くあれば早めに医療機関を受診し検査を受けてください。