ひじ・手首の痛み
ひじ・手首の痛みは、主に怪我による痛みと疾患による痛みの二種に分かれます。
いずれの場合も早期発見・早期治療が鉄則です。正しい診断に基づき、病態に合った最適な処置やリハビリテーションを受けることが必要です。
ひじに多くみられる痛み例
怪我による痛み
骨折は、軽症の場合はギブス固定による保存的治療が可能。ひどい場合には手術が必要となります。
上腕骨顆上骨折(ジョウワンコツカジョウコッセツ)
転倒や落下によりひじ上部を骨折するもので、10歳以下の小児によくみられる骨折です。骨折の程度が軽い場合にはギブス固定による保存的治療を行います。骨のズレ(転位)がひどい場合には手術が必要となります。治療はできる限り怪我をした当日中に行うことが望ましく、長期間のリハビリを要します。
橈骨頭骨折(トウコツトウコッセツ)
ひじから下の部分の前腕部は二本の大きな骨に支えられています。そのうち親指側にある骨を橈骨(トウコツ)と呼びます。橈骨のひじの連結部はキノコ状の形をしており、手を突いてこけるといった強い衝撃を受けると、その連結部が内部にめり込んでしまうことがあります。強い痛みと関節内出血が起きることで肘が動かしにくくなります。重度の骨折やズレ(転位)が認められる場合には手術が必要となります。雪道での転倒やスケートで勢いよく手をついて転ぶなどした際によくみられる怪我です。
側副靭帯損傷(ソクフクジンタイソンショウ)
ひじにも内側と外側に靭帯があります。転倒やスポーツでその靭帯が損傷すると、関節部に血種ができることがあります。数週間のギブス固定が必要となります。
Q.骨がズレたままだとどうなるの?
A.血管や神経を圧迫し、手の麻痺や筋肉の循環不良に繋がる可能性があります。
整形外科では骨の位置がズレることを「転位」と呼びます。転位した状態が長く続くと、神経の圧迫障害や筋肉の血行不良を招き、麻痺などの異常に繋がることがあります。レントゲンで転位の度合いを正確に把握し、早期に効果的な治療を開始することがなにより重要です。特に骨折は強い痛みを伴いますので、なるべく早く診察にお越しいただければと思います。
疾患による痛み
痛みを生じさせる過度な動作を避けることが原則。十分な安静を取り、必要に応じて注射やストレッチなどを加え改善を図ります。
上腕骨外側上顆炎(テニスひじ・ゴルフひじ)
ひじの使い過ぎで起きる病。一般的に炎症が右手に起きると「テニスひじ」、左手に起きると「ゴルフひじ」と呼ばれるその名の通り、テニスやゴルフを熱心にされる方に多くみられる病です。その他、重いフライパンを一日中振るような作業をされる料理人や、キーパンチャー、重労働を日常的にされる方にも多くみられます。いずれの場合も物を持ちあげて移動させるといった動作の際、ひじの外側に強い痛みを感じるのが特徴的です。ひじに負担をかける動作を軽減させることがなによりの治療法です。必要に応じてストレッチや痛み止めの注射をすることで早期の改善を図ります。
野球ひじ
ボールを投げるという動作は、実はひじに大きな負担をかけています。悪いフォームや過度な投球数により、ひじの外側にある上腕骨外顆に異常な力がかかり過ぎ、また、ひじ側部の靭帯が強く引っ張られることで次第に変形や靭帯の炎症を起こします。骨の変形はさまざまな伸縮の動き(可動域)を制限することとなり、野球はおろか将来のさまざまな身体活動に深刻な影響を与えます。野球ひじは主として成長期に起きることが多く、治療には安静が第一です。加えて、専門的な知識に特化した理学療法士による適切な基礎トレーニングやフォームの改善を重要視しています。また、定期的にレントゲンを用い、経過を精緻に確認しながら治療方針を確認しています。野球だけでなく、テニスのサーブなど投球動作と同じ動きをする場合にもよくみられる病ですので要注意!
変形性ひじ関節症
ひじの変形により、曲げ伸ばしが困難になる病です。日常的に重労働をされている方、ひじを酷使するスポーツをされている方などに多くみられます。ひじの内側を通る尺骨神経が圧迫されることにより、指にしびれを感じたり、指を広げること自体が難しくなる麻痺状態に陥ります。随伴して肘部菅症候群(チュウブカンショウコウグン)の症状が表れることが特徴です。
手首に多くみられる痛み例
怪我による痛み
手首の怪我は、主にはスポーツ時やご高齢の方の転倒時に多くみられるものでした。しかし、昨今では運動能力の低下に伴い、小児の患者数も多くなりつつあります。
橈骨遠位端骨折(トウコツエイイタンコッセツ)
転倒等により手首を強く突いた際に橈骨(トウコツ)が折れるもの。手の甲側に折れると「コレス骨折」と呼び、手のひら側に折れると「スミス骨折」と呼びます。
転位が少なければ通常はギブス固定で数週間ほどで治りますが、ご高齢の方は治癒を早めるために手術を選択する症例も増えてきています。加えて、手関節に近い部分の骨折のため、あわせて専門的なリハビリを要します。リハビリを行わなければ、手関節の動きにくさが残る可能性があります。
小児の場合は骨が非常に柔らかいため、完全に骨が折れ切っていない状態(若木骨折)になることがあります。そのため痛みもあまり感じないケースがありますので、正しい診断を行うことが大切です。特に小児は自己矯正力が高いため、多少の弯曲がみられてもギブス固定することにより自然に治癒してゆく傾向があります。手術は行わないのが原則ですが、手首部分には大事な成長軟骨(骨端線)もあるため、骨端線の転位が強い場合は手術を行うことがあります。
舟状骨骨折(シュウジョウコツコッセツ)
手首には8つの骨があります。特に舟状骨と呼ばれる部分は手を強く突いたときに特に折れやすい骨です。非常に血行の悪い骨であるために治りが悪く、偽関節(骨折が治らない状態)になりやすい危険があります。骨折が明白な場合は手術を要します。手術の際は特殊なネジで固定します。
手根管症候群(シュコンカンショウコウグン)
手首の手のひら側にある正中神経が圧迫されて起きる障害。親指と人差し指と中指にしびれを感じるのが特徴です。進行すると親指のつけ根の筋肉のふくらみ(母指球)が痩せて委縮し、次第に親指が動かなくなります。手を酷使する仕事をされている方だけでなく、妊婦や更年期の女性、透析をされている方などに多くみられる病です。治療としてはまずは安静にすることが大切です。手首部分に硬いサポーターなどで固定をする場合や、ひどい場合にはステロイドの注射をする場合もあります。進行すると手術が必要となります。
ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)
手のひらを垂直に立てて手首を上にあげる際に手首の親指側に張る腱の腱鞘炎です。産後、授乳等で手首を使って赤ちゃんの頭を支えることの多いお母さん方に多くみられる傾向があります。治療としては安静が重要となり、痛みがひどい場合には固定用サポーターや注射を用います。症状がひどい場合には手術となることもあります。
母指変形性CM関節症(ボシヘンケイセイシーエムカンセツショウ)
親指のつけ根にある最も動く関節をCM関節と呼びます。長期に渡って酷使されることで変形しやすく、物をつまんだり大きなビンの蓋を開ける動作などで強い痛みを感じやすい病です。高齢者の方に多くみられ、治療法は安静が最も効果的です。必要に応じて母指を固定するサポーターや注射を用いて治療します。ひどい場合には手術となることもあります。
ばね指
指の使い過ぎによる腱鞘炎です。指を曲げ伸ばしする際にばねのように反動や引っかかり、痛みを伴うのが特徴です。ひどくなると指が曲がりきって伸びなくなることがあります。特に長時間の編み物やピアノやキーボード打つなど指を酷使する方などに起きやすい病です。安静を第一とし、必要に応じて注射治療を行います。重症の場合は手術をすることもあります。
ガングリオン
指や手首の関節にゼリー状の液体が溜まり、硬い小さなふくらみができる病です。ふくらみが非常に硬いため、骨が突出したと勘違いされてお越しになられる患者さんも多いです。繰り返しできることがありますが、注射で溜まった液体を抜くとすぐに治ります。
ヘバーデン結節・ブシャール結節
手の指の関節が変形してしまう病です。第一関節(DIP関節)の変形をヘバーデン結節と呼び、第二関節(PIP関節)をブシャール結節と呼びます。明らかな原因は不明ですが、加齢による変化と考えられています。見た目を気にして心配される方が多いですが、指の動き的には問題がないため、特に治療を必要としません。
マレット変形(槌指)
突き指などで指の第1関節(DIP関節)
第1関節が腫れて自力で伸ばすことができません。
2つの場合があり1つは指を伸ばす腱(伸筋腱)
レントゲン撮影により両者を判断します。
治療は装具などで固定する保存的治療や骨性マレット指では手術を
TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)
TFCC損傷が転倒して手をついたりテニスやバトミントンやゴル
手首の小指側に痛みを生じます。
治療は安静や専用のサポーターの使用やギブス固定など保存治療が
ひじや手首の怪我は、年齢や性別にかかわらず起きるものです。
異常を感じた場合には放置せず、早期に整形外科での専門的検査を受けることを推奨します。
ひじや手首は、日常的な動作に直接的に関わる重要な部位です。将来的な身体の動きにも深刻な影響を与える可能性があるため、痛みや異常を感じた際には早期に正確な判断と治療を開始することが大切です。また、安静にすることが最大の治療となるケースも多いです。痛みや違和感を放置せず、整形外科での精緻な検査に基づく正しい診断をお受けすることをおすすめします。